パパからのプレゼント
主人が2歳の娘のクリスマスプレゼントに
おもちゃのキッチンを作る、
と言い出しました。
その日から毎週末ホームセンターに通い、
コツコツと作り初めました。
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そして、クリスマス当日にうやうやしく登場させました。
彼女の一言目は
「あ~...」でした。
ちょっと思っていた反応とは違いましたが、
スルーしてキッチンの使い方を説明しました。
蛇口やコンロ、シンクもあります。
素人にしてはなかなかの出来ではないでしょうか。
そうやって使うの?
一通り説明を受けたあと、
彼女はシンクに興味を持ちました。
シンクを思わせる小さなステンレスのボウルです。
しかし、それが外れるとわかると、
おもむろにかぶりました。
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そしてそのまま絵本を読み始めました。
何だか違う...
というような顔をしていた主人でしたが、
まぁそのうち遊ぶであろうと思っていたようです。
結果的に彼女は、
そのキッチンをキッチンとして使用する事は
一度もありませんでした。
その日から、室内でやたらとボウルをかぶって
歩き回っていました。
そして何を思ったのか、
おもちゃのキッチンに掛けておいたタオルを
首の後ろに入れ込み、
おままごと用の包丁を腹巻きに差したのです。
そして一言、「オイシイマン参上?」と。
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オイシイマンって誰なんでしょう。
私は初めて聞く名でした。
それから戦いを挑まれました。
しばらくやって満足したのか、
丁寧にマント(タオル)をたたみ、包丁を戻し、
ボウルを所定の位置へ戻しました。
キッチンはオイシイマンの変身キットを
置くための場所になったのです。
私が面倒臭くなって、
適当にオイシイマンの相手をしているのに気付き始めると、
今度は掃除機に対して戦いを挑むようになってしまいました。
掃除機をかける音がすると、
何をしていても一旦中止して、
慌てて変身します。
上手くタオルが挟めなかったり、
包丁がなかったりすると泣いて訴えてきます。
変身が完了すると、掃除機相手に本気モードです。
なかなかやっかいな事になったな、と思いました。
オイシイマンはしばらく出現し続けました。
しかし、年齢と共に回数も減り、
飽きたのかいつしかやらなくなりました。
いつしか妹も
数年後、妹が生まれました。
物置と化していたキッチンの上を片付け、
いつでも遊べるように準備しました。
そして彼女もまた、
誰が教えたわけでもないのに真っ先にボウルをかぶりました。
どうしてみんな同じ事をするのでしょう。
私にもかぶれ、かぶれ、とうるさいので
試しに頭にのせてみました。
少し小さすぎるものの、
それはヒンヤリと冷たく、
かぶり心地は悪くありませんでした。