産後の子育て中に突然、血便が出てびっくりしている方はたくさんおられます。
確かに便秘はひどいけど、真っ赤な血便が出たら誰もがびっくりしてしまいますよね。
「もしかしたら私って大腸がん?」
「それとも…切れ痔やイボ痔で出血してるの?」
他にも耳鳴りやめまい、背中の痛み…考えるのも嫌になるほど体はボロボロ。
しかも産後に起こる血便は、真っ赤な血便の物やどす黒い血便など症状も人により様々で、さらにトイレでうんちを出すときに痛みがあることもあれば、それほど痛みを感じないこともあります。
このページではそんな様々な症状がある産後の血便について、うんちの色や硬さ、痛みのあるなしなどいろいろな視点から見ていきます。
そして、自分の血便の症状がどれにあたるのか、大腸がんなどの病気なのか、それとも便秘や切れ痔やイボ痔なので起こる血便なのか、しっかりと見分ける方法をご紹介したいと思います。
一緒に詳しく見てちゃんと不安を解消させましょうね。
まず確認!血便ってどんな状態?血の色や出方をチェック
「血便」と一言で言っても、血の色や便との混じり具合で原因を推測する手がかりになります。慌てずに、まずはどんな状態か観察してみましょう。
- 鮮血(トイレットペーパーにつく・便の表面についている・ポタポタ垂れる):
- 色:鮮やかな赤色
- 考えられる原因:肛門や直腸付近からの出血が考えられます。産後で最も多いのは「痔(いぼ痔・切れ痔)」です。
- [ここに鮮血便のイメージイラストや説明図]
- 暗赤色便(便に血が混じっている):
- 色:赤黒い、レンガ色
- 考えられる原因:大腸の奥の方(結腸など)からの出血の可能性があります。炎症性腸疾患なども考えられます。
- [ここに暗赤色便のイメージイラストや説明図]
- 黒色便(タール便):
- 色:真っ黒でドロっとしている(イカ墨のような状態)
- 考えられる原因:胃や十二指腸など、上部消化管からの出血が考えられます。血液が胃酸などで変化して黒くなります。これは緊急性が高い場合があります。
- 鮮血(トイレットペーパーにつく・便の表面についている・ポタポタ垂れる):
- 粘血便(粘液と血が混じっている):
- 考えられる原因:感染性腸炎や炎症性腸疾患などが考えられます。
ポイント:産後の血便で最も多いのは、鮮やかな赤い血が出る「痔」ですが、自己判断は禁物です。特に暗赤色便や黒色便の場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
うんちの色で症状を見分ける
産後の血便も具体的な症状や原因を見分ける場合に「うんちの色で見分ける」は1つの基準となります。
真っ赤な血便が出る場合、ほとんどの場合が切れ痔かもしくはイボ痔が血便の原因です。
またその反対に、どす黒いうんちが出る場合は、虚血性大腸炎や最悪の場合は大腸がんということも考えられます。
この段階でとりあえず1つの目安にはなるわけですね。
また、この段階でも「産後に便秘になってしまっているママさん」の場合は、薬で便秘を直している場合もあり、その場合はどす黒い柔らかいうんちが出たとしても血便ではなく宿便である可能性もあります。
便秘の場合は、最低でも1週間近く「ちゃんとした排便がない」という状態が続き、病院で相談すると産後の授乳中のママさんの場合は、母乳への副作用の心配がない「マグミット」という便秘薬が処方されることがほとんどです。
マグミットという便秘薬は、私たちヒトの体の中にある「酸化マグネシウム」の自然の働きで大腸に水分を集めてくることで便を柔らかくして、自然な排便を流すというものです。
腸壁を刺激したり、胃壁を傷つけたりという種類の薬ではありませんので安心して飲むことができる薬なのですが、宿便を非常に柔らかくしてくれるために宿便が大量に出て血便と勘違いしてしまう場合があるんですね。
なので、マグミットを飲んで便秘を解消しているママさんの場合、どす黒い便が出ても血便ではない可能性もありますので、腹痛や吐き気がある場合を除いては、宿便が出せたということで安心していただいて大丈夫です。
なぜ?産後に血便や痔(ぢ)が起こりやすい理由
(既存記事でも触れているかもしれませんが、理由をより詳しく解説します)
- 妊娠中からの便秘:ホルモンバランスの変化や大きくなる子宮による腸の圧迫で便秘になりやすく、硬い便が肛門を傷つけたり、排便時に強くいきむ原因になります。
- 出産時のいきみ:分娩時の強いいきみは、肛門周りに大きな圧力をかけ、うっ血させたり、組織を傷つけたりします。
- 会陰切開や裂傷の影響:傷の痛みで排便を我慢してしまい、便秘が悪化することがあります。
- ホルモンバランスの変化:産後のホルモンバランスの変化が、腸の動きや血流に影響を与える可能性も。
- 生活習慣の変化:慣れない育児による運動不足、水分不足、不規則な食事なども便秘や血行不良を招きやすくなります。
このように、妊娠・出産は肛門周りに負担がかかりやすい時期なのです。「自分だけ?」と思わずに、多くのママが経験することだと知ってくださいね。
産後の血便、主な原因はやっぱり「痔」?種類と症状
産後の血便の原因として最も多いのは「痔」です。痔には主に2つのタイプがあります。
いぼ痔(痔核:じかく)
- 症状:排便時の出血(鮮血)、肛門の腫れ、痛み、かゆみ、肛門からいぼのようなものが出てくる(脱肛)。痛みがない場合もあります。
- 原因:肛門周りの血管がうっ血してこぶ状になったもの。強いいきみや便秘、長時間の座りっぱなしなどが原因に。
- [いぼ痔のイメージイラスト]
切れ痔(裂肛:れっこう)
- 症状:排便時の強い痛み(切れるような、しみるような痛み)、出血(鮮血、量は少ないことが多いが、紙につく程度からポタポタ垂れることも)。排便後もしばらく痛みが続くことも。
- 原因:硬い便が通過する際に肛門の皮膚が切れてしまうこと。便秘が主な原因。
- [切れ痔のイメージイラスト]
痔以外の可能性は?考えられる他の原因
頻度は低いですが、痔以外にも血便の原因となる病気があります。
- 直腸ポリープ、大腸ポリープ:良性の場合が多いですが、出血の原因になることがあります。
- 感染性腸炎:下痢や腹痛、発熱などを伴うことが多いです。
- 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など):慢性的な下痢や腹痛、粘血便などを伴います。
- 大腸がん:初期は自覚症状がないことも多いですが、便潜血陽性、便通異常(便秘と下痢を繰り返す)、便が細くなる、腹痛、体重減少などが見られる場合は注意が必要です。産後の年齢で頻度は高くありませんが、可能性ゼロではありません。
ポイント:血便が続く場合や、他の気になる症状(強い腹痛、下痢、発熱、体重減少など)がある場合は、痔と決めつけずに必ず医療機関を受診しましょう。
産後の血便で大腸がんの可能性がある場合の見分け方
産後の血便大腸がんの可能性がある場合、かなりの確率で便秘と下痢を繰り返します。
便秘の期間の長さについては、その時に食べている物の内容や量によりますので、一概に言うことができませんが、下痢になるたびに「毎回どす黒い便が出る」というのが、産後の血便と大腸がんの可能性がある場合の主な症状です。
また虚血性大腸炎の可能性もあります。
・産後に急に便秘なった
・下痢と便秘の後この繰り返し
・おならが臭くなる
・膨満感吐き気がある
このような症状に思い当たる方は、できるだけ早く病院に行って診断を受けることをおすすめします。
産後の血便で痔の種類がわかる
産後の血便で、切れ痔なのかイボ痔なのかがわかります。
簡単な見分け方なのですが、うんちをするときに刺激的な痛みを感じる場合は切れ痔です。
その逆に痛みを感じない場合は、イボ痔になっていると考えてよいでしょう。
ただし、イボ痔は今その場で痛みがないからといって、そのまま放置するのは危険です。
というのは、痛みがないイボ痔というのは内痔核と言って、まだ表に出てきていないイボ痔で、それが本格的に悪化すると外痔核といい、円座クッションなしでは座ることも厳しいほどの手術が必要な慢性的な痔に発展する場合があるからなんです。
慢性的な外痔核になる痔に発展してしまうと、1度の手術で完治しないケースがほとんどです。
外痔核を切除すること自体は、予約を入れて日帰りで手術を受けられることがほとんどですが、産後の子育てで忙しい日々を送っているママさんにとっては、子供を預けて病院に行くということも難しくなりますよね。
それにイボ痔が痛くて病院に行っているというのも、恥ずかしくて誰にも言えず…治るまではずっと辛い日々を送ることになってしまうことが多いんですね。
また血便が出ると、肛門に近い結腸の部分で排便の時の刺激で出血していることが多いので、痛みを感じないイボ痔になっている可能性が高く、市販薬のプリザエースやボラギノールなどの座薬で、少しでも内痔核を悪化させないようしっかり治していきましょう。
また、内痔核を市販のお薬で直している期間中は、極端に辛い物や塩分が強い食べ物は、できるだけ食べない方が無難です。
産後の血便の原因は痔
産後の血便の原因で最も大きいものが切れ痔やイボ痔であることは見てきた通りです。
しかし産後の痔になってしまう原因が、便秘なんですね。
産後に便秘になってしまうママさんはとても多いんです。
その原因のほとんどは「水分不足」です。
産後に水分不足になってしまう原因は、いくつかに分けられますが、次のようなものが多いようです。
・忙しさで水分補給がおろそかになる
・母乳で水分が使われてしまう
・食生活の乱れ
・食物繊維の不足
・栄養バランスの偏り
これらの原因が、産後に便秘になってしまう代表的なものです。
授乳間隔も短い赤ちゃんが多く、その間に着替えやおむつ交換、体を拭いてあげたり、夜泣きがひどければ寝ないであやしてあげたり…といったことも多々あります。
そのため、気がつけば立ち食いでお茶漬けやカップラーメンだけで食事を済ませていたというようなママも多いんですね。
こういった場合に、栄養バランスを整えたり食物繊維を摂ったり、精神的な落ち着きを取り戻し、役に立ってくれるマルチビタミンなどのサプリメントや酵素ドリンクなどが効果的です。
産後に便秘を長引かせてしまうと、めまい、立ちくらみ、体の節々が痛い、疲れがとれない、イライラしてつい赤ちゃんや旦那さんに当たってしまう…といった産後うつや育児ノイローゼなどの症状にもつながりかねませんので、育児の負担は旦那さんと分担できるようにしましょう。
産後のホルモンバランスの変化によるイライラなどから、旦那さんの家事や育児に満足できず、何を手伝ってくれてもありがとうという言葉も言えず、感謝をすることができなくなってしまう方もたくさんおられます。
「産後のガルガル期」という場合もありますが、できるだけ育児や家事に完璧を求めないように、肩の力を抜いて赤ちゃんや旦那さんとのコミニケーションを楽しみながら子育てをしましょう。
【セルフチェック】受診前に確認しておきたいこと
病院を受診する際に、以下の情報を医師に伝えると診察がスムーズになります。落ち着いて確認してみましょう。
- いつから血便がありますか?
- 血の色は?(鮮血、暗赤色、黒色など)
- 血の量は?(紙につく程度、便器が赤くなる、ポタポタ垂れるなど)
- 便に混じっていますか?便の表面についていますか?
- 痛みはありますか?(排便時、常時、どんな痛みか)
- 肛門の腫れや、何か出てくる感じ(脱肛)はありますか?
- 便秘や下痢はありますか?便の硬さは?
- 腹痛や発熱、吐き気、体重減少など、他に症状はありますか?
- 授乳中ですか?(薬の選択に関わります)
【要注意!】こんな血便・症状はすぐに病院へ!
以下のような場合は、自己判断せず、夜間や休日であっても速やかに医療機関(救急外来など)を受診してください。
- 意識が遠のく、めまい、ふらつき、冷や汗、動悸など貧血症状がある
- 多量の出血がある、出血が止まらない
- 我慢できないほどの強い腹痛がある
- 高熱が出ている
- 黒色便(タール便)が出た
これらの症状は、重篤な消化管出血やその他の緊急性の高い病気のサインである可能性があります。
産後の血便、何科を受診すればいい?
- 基本的には「肛門科」が専門です。女性医師がいるクリニックなど、受診しやすいところを探してみるのも良いでしょう。
- 近くに肛門科がない場合は「消化器科」「胃腸科」でも診てもらえます。
- まずは、かかりつけの産婦人科医に相談してみるのも良い方法です。必要に応じて専門医を紹介してもらえますし、産後の体の状態をよく理解してくれています。
受診をためらってしまう気持ちも分かりますが、原因をはっきりさせて適切な治療を受けることが、早く楽になるための一番の近道です。
産後の痔や血便の治療法について
診察の結果、痔と診断された場合の一般的な治療法です。
- 保存療法(まずはここから):
- 生活習慣の改善:食事指導(便秘改善)、排便習慣の指導、入浴など。
- 薬物療法:
- 軟膏や坐薬:炎症を抑えたり、痛みを和らげたり、出血を止めたりする薬。授乳中でも使えるものが多くありますので、必ず医師に処方してもらいましょう。
- 内服薬:便を柔らかくする薬(緩下剤)、炎症を抑える薬、血流を改善する薬などが処方されることもあります。
- 外科的治療:保存療法で改善しない場合や、症状が重い場合には、注射療法(硬化療法)や日帰り手術などが検討されることもありますが、産後すぐに行われることは少ないです。
大切なこと:授乳中であることを必ず医師に伝えましょう。自己判断で市販薬を使うのは避けてくださいね。
今日からできる!産後の血便・痔のセルフケア&予防法
病院での治療と合わせて、ご自身でできるケアや予防法も大切です。
最重要!便秘を改善・予防する
- 食事:
- 食物繊維をたっぷり:野菜、果物、きのこ、海藻、いも類、玄米などをバランス良く。水溶性食物繊維(海藻、果物など)と不溶性食物繊維(きのこ、豆類、玄米など)を両方摂るのが理想。
- 発酵食品:ヨーグルト、納豆、味噌などで腸内環境を整える。
- 油分も適度に:オリーブオイルなどの良質な油は、便の滑りを良くします。
- 水分補給:こまめに十分な水分(水、白湯、麦茶など)を摂る。朝起きてすぐのコップ一杯の水も効果的。
- 適度な運動:産後の回復に合わせて、無理のない範囲でウォーキングなどの軽い運動を取り入れる。腹筋を鍛えるのも◎。
排便習慣を見直す
- 便意を我慢しない:行きたくなったらすぐトイレへ。
- トイレで長くいきまない:5分以内を目安に。出ないときは一旦諦める勇気も。
- 排便姿勢:少し前かがみになると排便しやすくなります。足元に台を置くのも効果的。
- 温水洗浄便座:優しく洗浄するのはOK。ただし、水圧は弱めにし、洗いすぎないように注意。
肛門周りのケア
- 清潔に保つ:排便後は優しく拭き取るか、可能ならシャワーで洗い流す。ゴシゴシこするのはNG。
- 入浴で温める:湯船に浸かってお尻を温めると、血行が良くなり、うっ血や痛みが和らぎます。
その他
- 体を冷やさない:特に下半身の冷えは血行を悪くします。
- 長時間座りっぱなしを避ける:時々立ち上がって動く。円座クッションなども活用。
一人で悩まないで!不安な気持ちも相談しよう
産後の体に血便…本当にびっくりしますし、不安でいっぱいになりますよね。
でも、多くの場合は心配しすぎなくても大丈夫な「痔」が原因です。そして、痔は適切なケアや治療で必ず良くなります。
大切なのは、正しい情報を知り、必要であればきちんと医療機関を受診すること。そして、便秘対策などのセルフケアを続けることです。
不安な気持ちを一人で抱え込まず、パートナーやご家族に話したり、かかりつけ医や助産師さんに相談したりしてくださいね。気持ちが少し楽になるだけでも、体は良い方向に向かいやすくなりますよ。
まとめ(追記・修正)
産後の血便について、原因や対処法、注意点などをまとめました。
一番多い原因は「痔」ですが、自己判断せずに、まずは血の状態を確認し、必要に応じて早めに医療機関を受診しましょう。特に授乳中でも使える薬はありますので、医師に相談してください。そして、日々の便秘対策や生活習慣を見直すことが、改善と予防につながります。
不安な時期ですが、適切なケアで乗り越えていきましょう。