産後は多くの方が、排便についてトラブルを抱えます。
お産の時に会陰切開をしなければならないママが全体の6~7割にもなるため、排便の時にいきむのが怖くなり、我慢をしているうちに便意すら感じなくなり、重度の便秘になってしまう方もおられます。
また、お産の時に会陰裂傷や切開の傷口が広がって肛門括約筋が傷付いてしまうことで、産後に便失禁や便漏れ、トイレで拭いても拭いても出てくるなどのトラブルも起こります。
また、出産自体体内の水分が一気に排出されるため、水分不足になり便が硬くなってしまう事も排便トラブルの原因になります。
このページでは、産後の便のトラブルの対策とケアについて一緒に考えて行きたいと思います。
便漏れは異常?外出が怖い・・・
冒頭でも軽く触れましたが、お産の時に肛門括約筋が傷付いてしまうケースは珍しいものではありません。
3000g以上の赤ちゃんをお産された方は、産前に会陰マッサージなどを行いますが、それでもお産で赤ちゃんの頭が通る瞬間に会陰が裂けてしまうという方も多いからです。
この場合は、あらかじめ備えて会陰切開をしてあったのと違って、裂傷が肛門括約筋まで及んでしまい、産後の便漏れやお手洗いで拭いても拭き切れないといったトラブルになります。
肛門括約筋が傷付いてしまうと、便が通過する時の感触も感じにくく(抵抗感がないので)なってしまうため、「知らない間に便が漏れていた」「便意が起こってすぐにトイレに向かったけど間に合わず…」というケースも。
つまり、栄養状態が良く大きな赤ちゃんを出産するママが多くなった現在では、決して産後の便失禁や便漏れなどの肛門括約筋にまつわるトラブルは異常でもなんでもないんです。
便失禁や便漏れの対策とケアの方法
しばらくは外出が怖いと感じるようになると思いますが、肛門括約筋の損傷度合によって治療方法も変わって来ますので、あまりに酷い場合は、肛門科の専門医を受診しましょう。
骨盤底筋体操を勧めている情報もネット上で見かけますが、肛門括約筋の損傷と断裂では対処が変わってきます。
損傷ならば、高タンパク低カロリーな食事を摂り、水分補給を多めにして便を柔らかくして、骨盤底筋体操を行うというのが治療法ですが、断裂まで及んでしまった場合は骨盤底筋体操を行うと逆に症状を悪化させてしまう場合もあります。
肛門括約筋のダメージを正しく診断してもらう事で対策やケアの方向を正しく見定めることが出来ます。
産後の便失禁や便漏れを解消するためにも正しく現状を把握する事が大切ですよ。
会陰の傷が怖い!いきんで大丈夫?
先ほども触れましたが、お産で会陰切開が必要になるケースは約6~7割にも上ります。
そのため、お産が終わった直後の数日間は、円座クッションなしでは座ることすら難しいという方もたくさんおられます。
安心して頂きたいのは、会陰切開の縫合跡は便が硬くても避ける事はないという事です。
なので、便意を感じなかったとしても、毎朝トイレに行って仮に出なくても、ちゃんといきんで便を出す努力をしましょう。
なぜ便を出すのが必要なのかというと、産後にホルモンバランスの変化が戻り始めるタイミングでの体調不良につながりかねず、赤ちゃんへの授乳やお世話にも影響してしまうからです。
具体的には、腸内に宿便が残っていると、お産で体力を使い果たして身体全体の抵抗力が落ちている(免疫寛容)時期に免疫力が、さらに低下してしまい、風邪やインフルエンザなどの病気に罹ってしまう確率が高くなってしまうからです。
また、毒素が身体を巡ってしまうと、母乳の質や量にも関わります。
ちゃんと母乳が出ているにも関わらず、赤ちゃんが飲んでくれないというケースは、便秘によって母乳の味が悪くなっている可能性もあります。
母乳には、赤ちゃんに自己免疫力を付けるための大切なものですし、ママの方でも赤ちゃんが飲んでくれないと不安にもなります。
なので、出来る限り水分補給を心がけて、便が柔らかくなるようにして、排便がスムーズに行えるようにしましょう。
便が硬い!柔らかくするにはどうすれば・・・
産後は、水分不足から便が硬くなりやすいものです。
お産で、赤ちゃんと一緒に羊水が出ますし、悪露や後産でも胎盤の残りやお腹に赤ちゃんがいた名残りが排出されるため、その分水分が不足します。
また、母乳はママの血液と体内の水分で作られているため、お産直後から水分不足になる要因がたくさん揃ってしまっているんですね。
また、お産で体力を使い果たしているために腹筋が弱く、腸の蠕動運動(うんちを肛門まで運ぶ運動)もペースが落ちているため、通常ならば約8時間ほどで直腸まで送られるはずの便が、余計に時間が掛かってしまう事も便が硬くなる要因になります。
この対策とケアは水分補給が最優先なのですが、それ以外にも方法がいくつかありますので、次の段落で一緒に見てみましょう。
産後に便を柔らかくする方法
お産自体もそうですが、お産が終わった後にすぐに始まる授乳やお世話のためにママの身体は水分不足になっています。
水分補給は、妊娠期や産後の授乳期でなくても、1日で約1.5リットルくらいは必要と言われています。
ただでさえ、水分不足になる産後では、1日で最低でも2リットルは水分を摂るようにしましょう。
また、夏の場合と秋・冬の場合では水分の摂り方も変わって来ます。
夏は、あまりキンキンに冷やしていないお水やお茶を、秋・冬については身体を冷やさないためにも白湯やぬるめのお茶で水分補給しましょう。
授乳中でカフェインを控えなければならない場合は、お茶も緑茶や玉露などではなく麦茶を飲むと良いでしょう。
麦茶はノンカフェインですし、夏に美味しいのはもちろんですが、温めても香りが良いんですよ。
白湯やお水を飲むのが苦手という方は、是非試してみてはいかがでしょうか。
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水分補給をしてもダメな場合は
水分補給をしてもなかなか便が柔らかくならないという産後ママもおられると思います。
そういった方は、産婦人科で便を柔らかくするお薬をもらうというのも方法です。
産婦人科で処方してもらう薬で便を柔らかくするものは、酸化マグネシウムを主成分にした『マグミット』という薬が有名です。
その他にも、『マグネラックス』というお薬もあります。
また、市販薬でも『3Aマグネシア』というお薬がありますが、働きは皆同じで、大腸に水分を集める働きで便を柔らかくします。
また、呼吸法でも腹式呼吸を行うようにすると便秘や便が硬くなる原因の腸の蠕動運動を活性化させる働きがありますよ。
食物繊維が豊富な野菜、果物食べる
いわゆる、模範的な「スルッ」とスムーズに出てくれるような便の状態にしてくれるわけです。
産後の便の悩み解消法まとめ
ここまで産後ママの便の悩みについて解消法を一緒に見てきましたが、いかがでしたか。
便漏れや便失禁などの原因になる肛門括約筋の損傷。
会陰切開の傷は肛門とはまったく別のところにあるため安心していきんで良い事。
産後に便を柔らかくするには、水分補給や腹式呼吸、お薬を処方してもらうなどいろいろな方法がありましたね。
産後の身体の回復の中にも含まれる便の大切さが改めてわかりました。
我慢して、産後の頑固な便秘に発展すると自分自身にも赤ちゃんにも良くありませんから、出来る限り早めに必要な対策とケアを実践しましょうね。